2007年11月21日
" Working Time for Imagination "

 

今回は、私の画廊のスタッフの川村英子さんが考案した、ひとつの「アート」をご紹介します。


題名は " Working Time for Imagination "
 

内容はとてもシンプルで、一言でいえば「想像して働く」ということです。
 
 たとえばあなたが世界の貧しい地域で労働力として売られている子供たちのことに心を痛めていたとする。そうしたら、自分の日々の仕事の中で、ある一定の時間を決めます。たとえば月に一度、1日の1時間。その時間の労働を子供たちのために割り当てます。仕事の内容はあなたが勤めている会社での仕事でも、家事労働でも、ボランティア活動でもかまいません。ただ、その1時間は、必ず「子供たち」のことを想いながら働くのです。仕事の内容と結果は、直接に目的と結びつかなくてもいい。「他者への想像力を保ちながら働く」ことが、この行為で最も重要なことです。
 
 次に、この行為に対して、自分が、自分自身に報酬を与える。例えば30分=500円、1時間=千円など、その金額をプールしていきます。貯金箱でも、銀行口座でも。そうして半年あるいは1年ごとに、貯まった報酬を、たとえば、第3世界の子供たちの教育基金などに寄付する。つまりあなたは、子供たちの自立のために自分の「社会的時間」を創り、働いたのです。あなたの勤めている会社はもちろんそのためにあなたに仕事を与え報酬を支払ったわけではないのでしょう。しかしあなたは自分の想像力で労働の意味と報酬の目的をつくり出したわけです。

 どうでしょう?

 この行為のポイントは、普通の人が個人の実践として、自分の想像力次第でいつでも、どこでも、どんな仕事をしていても可能だということ。さらに、ただ目的のために寄付をするということだけではなく、人びとのために働く「社会的時間」という価値を、日々の日常のなかに自分の想像力によって創っていくということ、それによってあなたの時間と空間が変わります。そこに楽しさ、自由さ、豊かさがあるということです。

 川村さんはこの行為を最初は、ある市民大学のゼミの中で提案しました。これからの社会の豊かさはひとりひとりが、どれだけ「社会的時間」を持つかということにかかっている。「報酬を得るため」から「人々のために働く」ことへ「仕事」の意味を変える。物質ではない、新しい「社会的富」の創造。そこでは「想像力」が鍵になる。それが川村さんのコンセプトです。

 この行為は、形式的にはプロスポーツのスター選手が、例えば「盗塁一回成功につき車椅子1台を寄付する」という社会貢献をするのと似ています。もしその選手が「自力で走ることができないひとたち」のことを想いながら次のベースめがけて疾走していたとすると、まさに同じと言えるかもしれません。しかし、実際には彼は試合に勝つために全力を尽くしているはずですから、それは非常に難しいであろうと、すぐ思い至ります。

 アートは文字通り美を実現するための技術です。技術を競うのが目的ではありませんが、純粋さや熱意だけで美を実現できるものではないということは、ちょっとでも美に挑戦したことのある人なら思い当たることですね。だからこそアーティストは尊敬に値するとも言えます。そしてその「技術」とは手技の熟練の場合もあれば、「心のもち方」であることもあります。私も実はこの" Working Time for Imagination "にチャレンジしていますが、シンプルで楽しい反面、続けることは難しい。やはりこれも「アート」なのです。

 皆さんもトライしてみませんか?





H.K氏作品と川村さん

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